江戸時代、和装にはポケットがないため、煙草(たばこ)入れや巾着(きんちゃく)などは紐を帯にくぐらせて携帯し、その紐の先端には落ちないように根付(ねつけ)と呼ばれる小さな留め具を付けていました。実用品でありながら、優れた芸術性と遊び心あふれる装飾品として発展し、隆盛を極めていきました。
明治以降、生活様式の変化によって国内の需要は減りますが、海外ではその精緻な芸術性が高く評価され、工芸品として今でも世界中のコレクターから愛されています。戦後になると国内で再び脚光を浴びるようになり、様々な素材や斬新な創意工夫が凝らされた「現代根付」が生み出されています。
本展では、世界有数の根付コレクターである高円宮憲仁親王殿下と高円宮妃久子殿下が蒐集された伝統的な古根付と見代根苻約80点、そして日本根付研究会有志が所蔵する古根付の優品約60点を併せて展示します。手のひらに収まるほどの小さな作品に施された多彩な意匠と繊細な技巧、ユーモア溢れる遊び心をお楽しみください。