本展は、NHKディレクターとして数々のテレビ番組を制作し、また武蔵野美術大学では1990年の映像学科開設時に主任教授を務め、<全方位的な映像教育>という学科理念を打ち出した吉田直哉[1931-2008]が歩んだ足跡、映像表現へのまなざしを紹介するもので、吉田が制作したテレビ番組、著作をはじめ、番組制作のもととなった台本、原稿、写真などの周辺資料を一堂に展示し、吉田が映像というメディアをどのように捉え、実践に繋げていったのかを造形的な視点から紐解いていきます。
吉田直哉は、NHKがテレビ局の本放送を開始した1953年に入局して以来、映像表現への妥協のない姿勢を貫き、その後のテレビ番組形式の先がけとなる多くの作品を制作しました。映像とはいかなる性質をもったメディアであるか、その魅力を最大限に引き出す方法とは何なのか、映像化する情報を視聴者に公正に届けるにはどうするべきか、など吉田は常に映像への質の高い思索を展開し、新たなテレビ番組のかたちに具現化しました。映像と正面から対峙し実践を繰り返すなかで見出した独自の視点、姿勢は、膨大な数の映像が日常的に消費される現代においてより一層重要に感じることでしょう。
本展では、吉田の映像表現を造形的に紐解くキーワードを取り上げ、その思想の本質に迫っていきます。