浜田知明1917年生まれ。秀島由己男1934年生まれ。ともに熊本出身の作家です。ふたりは、戦争体験、公害問題、核問題、地震、…といった時代の大きなうねりを見つめて、自身の表現を静かに探り続けてきました。たがいに銅版画に独自の表現世界を見出した二人の作家の「版画」を再見します。
浜田知明、秀島由己男は、大川栄二(初代館長・1924-2008)と親交のあったアーティストです。大川は、浜田について「人間ドラマの一幕として理解し、人生を慈しむがゆえの冷厳なる人間観察の表出として浜田芸術を見てもらいたい」といい、また秀島については「何か人間の歓びや哀しみの絶叫を静かに浄化させつつ、心に滲み込むような余韻を持たす世界」と評していました。
作家の人柄にも惚れ込み収集したコレクター大川栄二と同時代を生きた浜田知明、秀島由己男。コレクターとアーティスト、生きた風土は異なりますが、時代の空気を敏感に察してきた者どうしの共鳴があったのでしょう。大川は両作家の作品を積極的に収集し、現在当館には浜田作品約50点、秀島作品約60点が収蔵されています。本展ではこれらの作品を一堂に展示します。
大川美術館は2019年に開館30周年を迎えますが、当館の原点を見なおすプレ記念事業のひとつとして本展を開催いたします。