中国陶磁に倣って作られた奈良時代の三彩や平安時代の緑釉陶器に始まり、愛知県の猿投から各地へと展開した古代・中世の古窯、茶の湯の美意識が創出した桃山の茶陶、伊万里・古九谷・鍋島にみる磁器の出現と展開、京都に華開いた野々村仁清、尾形乾山作の京焼、そして江戸後期の道八や木米の名品まで、1200年の日本陶磁の変遷に、日本の美と美意識を探ります。
日本では、各時代を通じて中国や朝鮮など海外の陶磁器に憧れの眼差しが注がれてきました。そしてそれらを模倣しながらも、やがて日本特有の造形美や美意識が形成されていきます。古代の中国奈良三彩は中国陶器の模倣の典型であり、中世の瀬戸でも灰釉牡丹文瓶など中国陶磁の模倣がなされました。しかし室町後半に至ると唐物(輸入陶磁)趣味を脱し、茶の湯の美意識を背景に、美濃の瀬戸黒や志野・織部、信楽・伊賀・備前・唐津など、各地で特色のある茶陶が焼かれ、そこには日本独自の美意識の結晶を見ることができます。
次いで伊万里焼も中国陶器の模倣に始まり、やがて古九谷や鍋島など日本的な美の様式を生み出しました。ヨーロッパにまで輸出されるようになった金襴手の伊万里焼は当時の王朝貴族を魅了するほどの名品となり、また鍋島も鍋島藩の統制のもと極めて質の高い磁器を作り出しました。本展の作品の半数は伊万里焼より構成されており、その成立から発展の様子をご覧いただけます。