革新的な撮影術と独自の視点でストリート・フォトグラフィーを創始し、現代写真に最も大きな影響を与えたロバート・フランク。彼の写真や映画は長らく静止画と動画の美的価値を問いただしてきました。ところが、その重要性に反して、フランクの作品展が開催される機会はそれほど多くありません。世界を巡回中の「Robert Frank: Books and Films, 1947-2017」展は、そうした現状を打破する画期的な展覧会なのです。
ロバート・フランクのオリジナルプリントは、近年、美術市場で高騰の一途をたどり、それらを借りて展覧会を開催するには莫大な保険料が必要となっています。さらには写真というメディアの脆弱性により、作品の劣化を恐れる所蔵者は貸出はおろか、展示さえためらうことも少なくありません。一方「Robert Frank: Books and Films, 1947-2017」展では、フランクの写真を廉価な新聞用紙に高画質で刷り出し、額装などはいっさいせずにそのまま展示します。そして展覧会終了後、それらは全て破り捨てられ、市場に出ることなく、この世から消えてなくなることになっています。最初にこのアイデアを聞いたフランクはこう言ったのです。「安くて早くて汚い、そうこなくっちゃ!」と。
会場では、フランクが故国スイスから持参したポートフォリオの写真から、アメリカ全土を旅してその土地の風景や人々をとらえ、写真史を大きく塗りかえた代表作『The Americans』、《Pull My Daisy》をはじめとする映画作品、〈ヴィジュアル・ダイアリー(目で見る日記)〉シリーズの最新作『Leon of Juda』まで、フランクの創作活動の全てをご紹介します。