大正画壇の異才岸田劉生(1891-1929)とその弟子椿貞雄(1896-1957)。椿が劉生に教えを請う一通の手紙から始まった二人の関係は、固い絆となって結ばれていきます。写実絵画を深化させていった劉生は、「実在の神秘」「内なる美」を追求し、さらには宋・元時代の絵画、浮世絵に傾倒して、「でろり」とした「グロテスクな美」を生み出しました。椿は、そんな劉生を兄のように慕い、その画風を学んでいきます。劉生亡きあとは、次第に独自性を発揮し、特に家族をモデルに明るく温かい作品を描いて「愛情の画家」と呼ばれるようになりました。
このたびの展覧会では、共にカンヴァスを並べ、芸術、人生を語り合い、長い時間をすごした二人に焦点を当て、稀に見る画風を築き上げた劉生と、大きな影響を受けながらも自らの写実を追い求め成就していった椿の軌跡を辿り ます。