松本哲男(1943-2012)は自然に向き合い、眼前に広がる風景を描き続けました。美術教師として着任した那須の風景画に始まり、ヨーロッパ、中国の自然を描きます。特に中国は松本の感覚にもよく合い、《黄山雷動》 《大同石佛》などの代表作を生み出しました。中国からインド、チベットにも足を延ばした松本は、1994年に開催したパリ個展をきっかけにもっと大きな自然、世界三大瀑布に挑戦しました。長さ12メートルにも及ぶ大作《ヴィクトリア・フォールズ(アフリカ)》《イグアス(ブラジル) 》は現代日本画の中でも、大作を得意とする松本のランドマークとなる作品となりました。
その後は、古代文明を主題とした風景と文明の痕跡を重ね合わせたダブルイメージの作品を発表しましたが、志半ばで急逝します。没後、初めての回顧展となる本展覧会では、代表作「世界三大瀑布」や素描を一堂に紹介します。