東北画とは何か?
「東北画は可能か?」は2009年11月、東北芸術大学にて日本画コースの三瀬夏之介と洋画コースの鴻崎正武により、学生と共に東北における美術を考える活動としてスタートしました。
私たちはこの問いを武器に、日本における東北という辺境において、その地域名を冠にした絵画成立の可能性を、首都圏のアートシーンからは遠く離れたこの場所で探しています。またそれは「日本」「東北」と一括りにされた風土や価値観の投影に対するローカル地域からの逆襲でもあり、一つの言葉ではけっして括れない様々なグラデーションを辿りつつ、全国から集まったメンバーそれぞれの制作動機を探す旅でもありました。この度、「東北画は可能か?」は鶴岡を舞台に、元来移動する生き物である人々の姿に焦点を当て、「道」・「旅」をキーワードとした展覧会を行います。IターンUターンという言葉が指すように、地方には移動のスタートやゴールとしての場所、というイメージがありますが、鶴岡という場所を探れば、北前船や最上舟運、六十里越え街道など、人々や物、情報が行き交うなかで発展してきた歴史が見えてきます。また、鶴岡で厚く信仰される修験道も、修行の後に生まれ変わり戻ってくる場所は、日常のある俗世であり、信仰もまた聖と俗との行き来のなかで人々の生活に根ざしてきたと、言えるでしょう。
鶴岡アートフォーラム全体を「地国構想博物館」と見立て、民俗資料と現代アート作品が並ぶ空間を鑑賞者が歩き回ることで、「移動する私たち」に目が向けられ、私たちの明日をみんなで構想する展覧会になればと願っています。