フランスの裕福な家庭に生まれたジャック=アンリ・ラルティーグ(1894-1986)が父親からカメラを与えられたのは、8歳の時でした。
感受性ゆたかな少年は、目前の「幸せな瞬間」を残していける“魔法の機械”=カメラに夢中になり、生活のあらゆるできごとを毎日写真におさめたのです。彼は、撮りたいものをスレートに撮りました。跳びあがる猫、テニスやスケート、自動車レースや飛行機など、動くものをつかまえたいという素朴な欲求から、ユニークな作品が生まれます。また家族や恋人、友人たちとの幸福なひとときを愛おしむように撮影された作品は、作家その人の人生までもが記録され、観る者に不思議な懐かしさを味わわせてくれます。この展覧会は、その多くが日本初公開であるカラー作品を含め、幼時から晩年にいたる約160点を通して、写真をたのしみ、過ぎゆく時間や人生の歓びをつかまえようとしたラルティーグの世界をご紹介します。