大寺俊紀は一九四○年生まれの牧師である。彼は六〇年代にオブアートやジオメトリックアートと呼ばれる一潮流に合流し、以来五〇年以上にわたって一貫して幾何学抽象画を制作し続けている。
他方、乙うたろう(前光太郎)はキャラクターの存在や信仰を再検証している作家である。彼は本来二次元の存在であるキャラクターが三次元の立体へと変換される際に身体性を得ることへの疑問から出発し、自作の壺にキヤラクターを宿らせる。
「西洋の絵は脊椎動物であるが、日本の洋画は軟体動物である。骨格がない。」とは外山卯三郎の一言葉であるが、ニュージオメトリック・アートグループの中心メンバーである岩中徳次郎が外山のこの発言を再三著書で引用していることは興味深い。大寺俊紀と乙うたろうはそれぞれ独自の信仰のもとで、「やわらかな脊椎」を模索しているのである。 文・長谷川新