橋本博英(1933~2000)は、油彩画の正統な技法を重んじ、卓越したデッサン力をもとに純度の高い風景画を生み出した洋画家です。橋本は岐阜県に生まれ、東京芸術大学で伊藤廉教室に学んだ後、模索期の1967年に33歳で渡仏し、アカデミー・ジュリアンおよびグランド・ショーミエールでフランス絵画の伝統に触れ新しい画境を拓きます。帰国後、既成の団体に属することなく、個展と「黎の会」などのグループ展で旺盛に作品を発表しました。また、阿佐ヶ谷美術学園(現阿佐ヶ谷美術専門学校)、東京造形大学、女子美術大学で多くの後進を育て、美術教育にも足跡を残しました。
当館は、2006年に「橋本博英展―色彩の交響曲―」を開催し、1990年代の円熟した作品を紹介しました。このたびは、フランスより帰国した直後の1969年から70年代、80年代の作品を通して、美しく響き合う色面により構成する画風を確立し、深化させていく過程をご覧いただきます。南外房の海浜に取材した数々の清澄な作品も見どころの一つです。懐かしく愛しい日本の風景を描き続けた橋本の、澄んだ色彩の中に光と風までも感じさせる作品をお楽しみください。