産業工芸試験所は、日本の商工省工芸指導所が1952年(昭和27年)に改称改組して通産省工業技術院下に置かれた国の機関です。1928年(昭和3年)、仙台市に設置された商工省工芸指導所は、国内産業と輸出産業の振興を、工芸および今日的意味でのデザインから行うことを目的としていました。その事業を引き継いだ産業工芸試験所では、国内外から数多くの生活用品を参考品として収集し、また国内各地の試験場、生産者とも協力してさまざまな種類の試作品を制作しました。こうした参考品、試作品の多くは一般財団法人 工芸財団に移管され、その一部が当館に寄託・保管されています。それらの貴重な資料は、当時のデザインや技術、素材の特質を示すと同時に、どのようなありうべき日本の生活スタイルを理想としていたのかを浮かび上がらせるものでもあります。
本展では、1950年代から60年代を中心に、産業工芸試験所の参考品、試作品約150点を紹介し、戦後復興期から高度経済成長期の日本が目指したデザイン、そして生活像を検証します。
戦後、日本が復興し、国際社会へ進出する経済成長の時代、デザイン、工芸がいかに社会や産業、輸出貿易といった現実的な問題と関わり、貢献したのか。また、世界のデザインや工芸のレベルをどのように考え吸収し、日本のデザイン=産業工芸として昇華させたのか、その一端をご覧いただけることでしょう。
*本展は「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成25-29年度)」の採択を受けて開催します。