「ミューズ」とは、美術、音楽、文芸などの諸芸術をつかさどる女神たちのことです。古代ギリシャでは、彼女たちは芸術家にひらめきを与え、制作意欲をかきたてる存在と信じられていました。芸術家にとってのミューズとは、実のところ、身近にいる女性たちのことだったのかもしれません。女性たちの姿は、かわいらしい恋人として、つつましやかな妻として、愛情あふれる母として、あるいは家庭を飛び出して仕事に勤しむ社会の担い手として、またときには男性を誘惑し破滅へと導く「ファム・ファタル」として、さまざまな姿で美術作品に登場します。
8つの章で構成される本展覧会は、昨年ル・コルビジュエ設計の本館が世界遺産に登録された国立西洋美術館のコレクションから、合計103点の絵画、版画、彫刻、そして指輪作品が出品されます。ルネサンスから印象派を経て20世紀に至るまでの珠玉の作品を通して、芸術家たちのまなざしの先にあった、魅力あふれる女性たちの姿をぜひお楽しみください。