日本の版画界を代表する銅版画家・中林忠良(1937ー)。「すべて腐らないものはない」という観念の下、白と黒のモノクロームで表現される世界を追究しています。
中林は東京藝術大学で油絵を学んだ後、同大大学院で版画を専攻し、銅版面の駒井哲郎に 師事して銅版画の道を歩み始めました。腐蝕銅版画(エッチング)は腐蝕を繰り返してイメージを定着させます。銅が溶け出る美しさを見ながら腐蝕の海から銅版を取り出すタイミングを待つという、必要不可欠なこの腐蝕過程を、中林は自身の体の一部として感じながら取り組んできました。また制作の一方、東京藝術大学教授を務めながら後進の指導にあたるなど、銅版画普及にも尽力してきました。その功績は大きく2003年には紫綬褒章, 2014年には瑞宝中綬章を受章してします。
本展では、《Position》、《転位》のシリーズをはじめ、最新作までの作品を一堂に展示し、1961年以来56年間に及ぶ画業をご覧いただきます。