長谷川等伯(1539~1610)は能登七尾出身で、桃山時代に活躍した日本を代表する画家です。当館では平成8年から毎年テーマを変えて、「長谷川等伯展」をシリーズとして開催し、出身地の美術館として等伯や長谷川派の作品を展示・紹介しています。
シリーズ22回目となる本年は、3つのテーマで等伯の若き信春時代の仏画から晩年の水墨画まで、参考展示の複製画4点を含めた32点を紹介します。
テーマ1 《絵仏師信春の活躍》
等伯は能登時代、信春の名で仏画を中心に描く絵仏師として活躍していました。養父・宗清の影響を受けながら京都の優れた絵画にも触れ、豊かな色彩と緻密な描写による、自信に溢れた作品を生み出していきました。現存作品からは、絵仏師として並外れた技量を兼ね備えていたことが分かります。ここでは、それら等伯や長谷川派の仏画を中心に、初公開の新発見作品も加えて紹介します。
テーマ2 《上洛…京都での飛躍》
等伯の正式な京都移住は、30歳を過ぎてからとみられていますが、20歳代前半頃にはすでに等伯生家の奥村家菩提寺・本延寺の本山である本法寺の塔頭・教行院を宿坊として頼り、活動の場を広げて行ったと考えられます。本展出品の『教行院過去帳』には、等伯をはじめ長谷川一族の名が記され、また、蒔絵師の五十嵐家、刀剣研磨・鑑定などを家業とした本阿弥家も名前を連ねているのです。ここでは、本法寺所蔵作品や法華宗をめぐる人脈も紹介します。
テーマ3 《水墨画の魅力》
等伯は信春時代から水墨画も描いていますが、特に晩年は水墨画に美の境地を求めていきました。その筆法は自由自在で、国宝「松林図屏風」(東京国立博物館蔵)をはじめとする数々の名作を生み出しました。ここでは、絶妙な墨の濃淡で表された風景・人物・動物などをご覧ください。平成27年に新発見された「猿猴図屏風」と「松竹図屏風」や、参考資料の「複製松林図屏風」も展覧します。