第二次世界大戦の敗戦からの復興期に製陶を生業とする京都の東山に新しい陶芸を模索する青年たちがいました。本展で紹介するのは、そのなかにあってそれぞれの立場から陶芸界に新風を送り込んだ八木一夫(1918-1979)と清水九兵衛(旧姓塚本廣、後に清水洋、裕詞、七代六兵衛 1922-2006)です。
八木一夫は、鈴木治、山田光ら陶芸家仲間と1948年に結成した走泥社の中心的存在であり、用途を持たない彫刻的な作品を“オブジェ焼き”と称して制作し、その表現としての可能性を追求し続けました。陶芸家八木一艸の長男として京焼の本場といえる五条坂界隈に生まれ育った八木の造形の妙味は、茶の湯をはじめ使い手の美意識に育まれた日本のやきもの文化や製陶業の現実を背景に持ちながら、西洋近代美術の考えを取り入れて自身の思想や心象の表現を重視したところにあります。
一方、名古屋に生まれ名古屋高等工業学校で建築を学んだ清水九兵衙は、東京藝術大学工芸科鋳金部に在籍していた1951年にガラス、家具デザイン、染織、漆工の分野で活動する佐々文夫、松村勝男、巽勇、中村富栄と新工芸協会を結成し、最新のモダンリビングに合うインテリアや器物を提案する展覧会を東京、銀座で行う傍ら、江戸時代から続く陶家、清水六兵衛家の養嗣子となり陶芸の道に入りました。端正なデザインの作品!は日展でも受賞を重ね、ホープとして期待されていたことが窺われます。
実用と表現、土とフォルム、陶芸と彫刻のあいだに新たな表現領域を見出した二人の挑戦は今も色褪せることなく、現代陶芸の多様な表現との繋がりを感じさせます。本展での紹介は彼らの幅広い表現活動の一端ではありますが、その自由な取り組みをご覧いただきたく思います。