東洋では古くから、花鳥画を始めとして、花と動物を表す作品が描かれてきました。それらは目を楽しませることはもちろん、日々の安寧への祈り、こうありたいと願う理想像など、人々の様々な想いを託して生み出されました。本展観では、中国、日本、朝鮮における花と動物の美術作品を一堂に展示します。
特集陳列として、2017年春に修理を終え、修理後初公開となる重要文化財・伝毛益(もうえき)筆「蜀葵遊猫(しょっきゆうびょう)図・萱草遊狗(かんぞうゆうく)図」を中心に、東アジアにおける猫と犬の美術をご紹介します。中国・南宋時代に描かれた「蜀葵遊猫図・萱草遊狗図」は、遅くとも江戸初期には日本に伝来し、狩野派を始めとする画家達がそのモチーフを積極的に学びました。同様のモチーフの伝播は、朝鮮絵画にもうかがえます。本作が東アジアの動物画の祖型として、重要な位置付けにあることを、実作品を通して見ていきます。
更には、近年再発見され、約80年ぶりの公開となる明時代の宣宗(せんそう)皇帝筆「麝香猫(じゃこうねこ)図」(個人蔵)なども展示し、東アジアの動物画の多彩な世界に迫ります。文華苑に咲きほこる花々とともに、彩り豊かな生命の美をどうぞお楽しみください