「山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)」は、刀工・堀川国広による名刀です。天正18年(1590)、足利の領主・長尾顕長(ながおあきなが)の依頼で作刀したもので、その覇気のある作風と凛としたたたずまいは見るものを魅了し、国広の代表作を言われています。
このたび、427年の時を超え、初めて足利の地で「山姥切国広」を公開いたします。あわせて、足利学校で同年に打ったとされる、国広の脇指「布袋国広(ほていくにひろ)」も公開いたします。
国広の一生は謎に満ちており、「山伏の名を借りて諸行を行脚したスパイである」「京都で人を殺め、その冥福を祈るために足利学校に来た」など、数々の逸話が残されていますが、これらの真偽は定かではありません。しかし、国広が長尾顕長のために「山姥切国広」を打ったこと、同年に足利学校で「布袋国広」を打った事実は明らかです。
本展は、名刀を紹介するとともに、長尾顕長や当時の足利学校庠主(しょうしゅ)(校長)・閑室元佶(かんしつげんきつ)に関する史料、戦国期の足利を写した「長尾但馬守居城之図(ながおたじまのかみきょじょうのず)」(初公開)などを通して、九州出身の国広が足利の地へ向かうこととなったきっかけを検証しようと試みるものです。また、二つの国広の刀に加え、国広作の短刀が特別展示されることになりました。形状や銘から「布袋国広」との共通点が見てとれます。この機会にぜひご覧ください。