このたび東京都写真美術館は、総合開館20周年記念として「山崎博 計画と偶然」展を開催します。本展は写真・映像を「時間と光」というエッセンスによって捉え、1960年代末より活躍してきた作家・山崎博 (1946-)の仕事をたどる公立美術館で初めての展覧会です。長時間露光によって太陽の光跡を視覚化した代表シリーズ〈HELIOGRAPHY〉をはじめ、〈水平線採集〉や〈櫻〉のシリーズなど代表的な写真作品と、また作家が写真と平行して追究してきた映像作品、さらに新作を含む出品作品200点によって、現代のコンセプチュアルな写真・映像の先駆者・山崎博の歩みを今日的な視点から通覧します。
山崎の作品は光の現象のもつ無限の豊潤さや時の流れを感じさせます。作家はつねに一定の枠組みや単純化された方法論をとりながら、「太陽」、「海」、「櫻」といった普遍的なものに一貫して取り組んできました。その作品は対象と装置、被写体とイメージの関係性を示唆するとともに、光の表現の豊かさや静謐で美的なクオリティを獲得しています。
70年代の初め、山崎は「いい被写体を探して撮る」ことへの疑いから、「被写体を選ばずに撮る」ことを模索し、自宅の窓のような制約のある風景、特徴のない単純な海景といった「与えられた枠組」の中で方法的な探求を行うスタイルに行き着きました。計画性にもとづく制作と、写真行為の中で起こる偶然性がその作品の大きな特質となっています。作家は「計画がなければ偶然もない」と言います。「計画と偶然」の二つの要素が相互に作用することで、山崎博の作品は成立しているのです。
本展は45年以上のキャリアにおよぶ作家の主なシリーズを通して、その表現世界の本質に触れる試みです。