松江高校を卒業して7年後、初個展「人間の土地」(1956)を開催し写真界に衝撃を与えた奈良原一高(1931-)。1964年に初めてヴェネツィアを訪れて以来、この神秘的な水上都市に魅了されます。そして、回廊の灯りが カーテンの襞を浮彫にするサン・マルコ広場の128の回廊アーチすべてを撮影し、世界一長い写真集 『光の回廊―サン・マルコ』(1981)を完成させました。また、夜の闇のなかで華麗な光を放つ海上都市を 写真集『ヴェネツィアの夜』(1985)に、さらに、仮面の人々で溢れ街自体が劇場となるカーニヴァルを写真集 『ヴェネツィアの光』(1987)に纏めました。今回は、この三部作を中心に、約80点で奈良原の愛したヴェネツィアを 紹介します。