河村るみ(1980~ )は、「私とはなにか」ということを出発点に自分自身が生きていることについての思索をパフォーマンスやインスタレーションに表してきました。これまで「寝る」「起きる」「走る」という行為をひたすら規則的に繰り返すパフォーマンスや、「立つ」「座る」「寝る」「消える」という自身がパフォーマンスした行為を映像に積み重ねたインスタレーションの作品を発表しています。今回は、一昨年母の介護を経て看取った経験から感じた、表裏一体にある生きることと死ぬことについて、パフォーマンスと映像を使ったインスタレーションで表現します。「手のひらの上に置いた氷がとけてゆくのを見つめる」というパフォーマンスを会場内で毎日午後4時に行い、その映像は日々積み重ねられていきます。がんに侵され、食べることのみならず、水を飲むことすらも困難になっていた寝たきり状態の母親に、氷を口に含ませ、溶けた水で水分摂取を行っていた時に、氷の冷たさが母親に生きていることを実感させているようだと気付き、その経験がもとになっています。看取る-見ている-ことが主題の作品です。