近代以降、絵画に対するさまざまな考え方が生まれ、必ずしも現実の再現性に重きをおかない、抽象的な表現や夢の中を描く表現もあらわれました。とりわけ、日本においては、従来の画材とは全く異なる油絵が明治以降本格的に流入し、描く方法も対象も大きく変化したといえます。
その一方、芸術家が目を向けるものの中には、なじみの風景や日常の出来事、身の回りの小さな発見など、古今変わることなく選ばれ続けてきた対象もあります。冬の所蔵品展では、画家が日々のくらしの中の出来事から描き起こした作品を紹介します。それは、画家の住むすぐそばの景色や心象の風景であり、身近な人物あるいは家の中のものをじっと見つめて描いたものなどです。
本展で取り上げる1920 ~ 30 年代の戦前の作品では、社会の近代化にともない、人々のあこがれとなった都市の生活が多数描かれました。その後、現代に近づくほど、より個人的な体験として描かれるようになります。
いずれも、ありふれた日常を手掛かりにしながら、鋭い感性があらわれているように思われます。思いもよらない世界の広がりを画面に定着させた作品をご鑑賞ください。
また、これに加えて、2015 年に新たに収蔵された作品を展示する特設コーナーを設けてご紹介いたします