人物画は静物画や風景画と並ぶポピュラーな画題であり、画家は修業時代から自らの技量を磨く手段として取り組み、中にはそれを自らの専門とする者もいます。
ところで、人物画の魅力とは何でしょうか。描かれた対象の容姿が本人とよく似ていることは、人物画を描く、もしくは描かせる際の必要十分条件です。特に、写真が登場・普及する以前の絵画や画家には、そうした役割や機能が求められました。しかし、実際に鑑賞して魅力の感じられる人物画とは、描かれた対象が表面的に写せているかよりも、作品からその人物の心情や人柄が感じられるものであることが多いのではないでしょうか。
本展では所蔵する人物画の中から約40点を、描かれた人物の「目」に着目・分類して紹介しています。人物画の中でも顔、顔の中でも目は、人物の表情を決定づける大きな要素であり、改めてその眼差しに注目しながら、作品を鑑賞してみると、作品の持つ意外な側面や、作者の思いについて気づかされることがあります。人物画に見られる、描かれた側と描く側それぞれの個性をお楽しみください。