版画家・永井研治氏は主に石版石を版材とした版表現(リトグラフ)を一貫して追求してきました。本展では、永井氏の50年にも及ぶ活動の軌跡と本学での教育・研究の成果を展覧いたします。
本展は、油彩で描いた作品を単純化・抽象化し、5版5色で再構成して制作した最初のリトグラフ作品《Shell》(1970年制作)を皮切りに、初期から現在に至る永井氏の代表的なリトグラフ作品やドローイング作品約60点を中心に、制作の軌跡を辿るはじめての機会となります。主に、ローラーぼかし技法によるグラデーションを使い奥行きの浅い空間に糸で引っ張られた色紙を漂わせる1980年代の《白線》シリーズ、その《白線》シリーズを解体することを目指し、オランダ留学中に17年振りに石版石のみで制作した多色刷リトグラフ作品《NL》シリーズ(「New Line(新しい線)」と「Netherlands (オランダ)」をかけたタイトル)、版を描くことに重点をおき白ヌキ曲線「White Line(白い線)」をアルミ版に描画した《WL》シリーズ、「Chaos(混沌)」と「Cosmos(秩序)」対極にありながらも共存することでバランスを保ち、「Line(線)」にこだわった《CL》シリーズを一堂に集めます。長年にわたり「線」にこだわり、「相対と調和」を探求し続け、制作された作品の数々をご堪能ください。