土門拳はその生涯において5回秋田を訪れています。昭和26(1951)年の5月、昭和28、31、32年の6月、そして42年の正月。当時土門拳は、リアリズム写真を提唱し、写真界にブームを巻き起こしていました。今回展示の作品には、みずからもリアリズム写真の実践をするがごとく秋田の町の人々や田んぼなど1950年代の秋田の素顔が写し込まれています。
また土門拳は、長女の誕生祝に友人にもらった小椋久太郎作のこけしに、仏像にも似た古格を感じていましたが、昭和42年、長い間の念願がかない、足の不自由をおして豪雪の木地山の撮影をしました。
秋田の作品には風土や人に対して親しさや優しさが漂っています。同じ東北人だった彼の中にきっと懐かしさや親近感があったのではないでしょうか。