「無限に広がる宇宙に存在する数えきれない星の中でも、色彩豊かで、様々な光や音が響き合う、とびっきりユニークな星、地球に、一人の人間としてボクは生まれた。これはどう考えても、奇跡としか言いようがない」*
1960年代半ば以降、一貫して風や水などの自然エネルギーで動く彫刻を制作してきた新宮晋。彼が生み出す作品は、この「奇跡」にあずかった作家自身の喜びと感動を映し出しています。風、水、重力、熱、光・・・。絵を描くことや工作が何よりも好きだった少年時代と変わることなく、目の前に展開する世界に対し常に新鮮な驚きと好奇心をもって向き合う新宮のくもりのない真っ直ぐなまなざしは、我々をとりまき、我々を生かしている様々な要素を照らしています。そして、彼の動く彫刻たちは、地球の自然環境や宇宙のしくみといった壮大なテーマをうたうのです。風をかたちにとどめる。水の流れをかたちにとどめる。重力をかたちにとどめる。見えないものを見えるようにすること。そのことに作家が覚えるワクワクするような高揚は、作品を見る者にたちまち感染してしまいます。
本展では新宮晋の"現在"を、新作を中心とする15点の作品によりご紹介します。その名も「新宮晋の宇宙船」。さあ、一緒に、新宮船長がいざなう楽しい宇宙の探索へと出かけましょう!
*新宮晋「この星に生まれて」(本展図録所収)より