彫刻家・鈴木久雄(武蔵野美術大学共通彫塑研究室教授)の鉄による彫刻作品を中心に、1980年代の初期鉄彫刻から現在に至るまで代表的な作品約20点を紹介し、彫刻の速度(=時間と距離との関係によって生み出されるもの)をテーマに、鈴木の彫刻に対する思考とその実践をたどります。
本展では数千からなる鍛造ステンレス鋼の部材によって構築された大型の彫刻作品《距離・Irish Distance》(2006年)《散距離》(2008年)、《交叉距離》(2009年)、《環距離》(2011年)を中心に、展示室から吹き抜けのアトリウム空間全体へと拡張するダイナミックな展示を行います。鍛造と溶接の膨大な仕事量によって制作された幾多の鉄パーツに刻まれた「時間」、それらを構築することで空間に現れた「距離」。展示空間はこれら彫刻の原質を形象化した巨大作品によって「彫刻の速度」を思考する空間へと変様します。また同時に1980年代の初期鉄彫刻から近作まで、鉄や石といった素材との対話あるいは対峙を通じて展開してきた「幾何形体」「風化儀式」「塔体」「木の現象」「人型距離」シリーズにおける一連の作品を紹介します。
展示空間全体に張り巡らされた巨大彫刻と各所に配された代表的な彫刻によって、鈴木久雄の彫刻世界に触れます。