これまで唐津焼といえば、茶人の間で高い評価を得てきた桃山時代の茶碗や水指、花生といった茶陶唐津などでした。
今回「知られざる唐津」としてご紹介する焼物は、江戸時代に現在の佐賀県武雄市の南部地方にある窯で焼かれました。生活の道具として各地の大名屋敷で使われ、またインドネシアやタイなど東南アジアへも輸出され、愛用されました。大正末期(1925頃)以降、柳宗悦らの興した工芸運動により、その素朴で大胆なデザインが「民芸品」(民衆的工芸品)の典型的なものとして存在感を高めたのでした。その反面、いわゆる唐津焼としては認められなくなり、日常生活上での実用品の扱いを受けてきました。
素朴ななかにも新鮮で迫力あるデザインが施された唐津焼を再発見し、江戸時代の人々を魅了した器の楽しさを見て頂ければ幸甚に存じます。