千年もの間、やきもの作りを連綿と続けてきた瀬戸では、様々な作家がその時代に合わせ、やきものの発展を願い試行錯誤を繰り返し、現在の一大名産地となりました。18世紀では瀬戸の礎を構築した名工たちが日用品とは異なった陶芸の世界を展開し、明治期には西洋文化が享受され、さらに産業技術の発展が手助けとなり瀬戸は大きく発展します。そうした中、明治中期に、全国でもいち早く陶芸家たちの育成の学校が開校し、昭和には作家たちで構成された陶芸家集団が立ち上がり、発表の場を積極的に設けてきました。そうして現在の日展において工芸部門の設立時には作家の多くが出品し、特に戦後の瀬戸は「日展の瀬戸」といわれるほど、造形性の富んだ作品が生み出されました。
現在、瀬戸の陶芸の中心である瀬戸陶芸協会とは、こうした時代背景のもと藤井達吉の「芸術は産業の母体である」といった理念を軸に発足された設立80周年を迎える歴史ある協会です。協会の活動の中心は、作家個人の技術面の向上もさることながら伝統の上に立つ新しい感性の構築です。こうした研鑽を積む作家たちの技によって協会は現在もなお精力的に活動を続けています。本展では、瀬戸陶芸協会の協力のもと、瀬戸で活躍する作家たちの作品を紹介します。設立80年を記念した展覧会は、今春に瀬戸市美術館を筆頭に、その後東京と巡回し、フィナーレとして爲三郎記念館で開催されます。釉薬、造形、土、窯と様々に研究を続ける作家の熱き戦いをご覧ください。