石垣定哉(1947~ )は、三重県員弁郡東員町の出身。子どもの頃から絵画制作を好み、1966年に愛知県立芸術大学美術学部に入学しました。大学時代は同時代の前衛美術に関心を寄せたこともありましたが、1970年代前半から油彩画を本格的に発表するようになります。1973年からは白日会へ出品するようになり、翌年初個展を開催した後、ヨーロッパ、続けてニューヨークに滞在して様々な模索を行いました。
1978年に帰国した後は故郷の風景や女性像などを制作しますが、試行錯誤を繰り返す時代が続きます。白日会や個展での作品発表、海外への取材旅行を重ねる内に、1980年代終わり頃から強い色彩を特徴とするようになります。そうした展開を決定的にしたのは、青年時代から幾度も訪れたニューヨーク・マンハッタンの風景を主題にした80年代末から90年代前半の半抽象的な作品でした。この頃になると、石垣は各種展覧会でも受賞を重ね、洋画界で注目を集めるようになりました。
木々が生い茂るバリ島やシンガポールを取材したパラダイス・シリーズ、そしてパリの踊り子たちを描いたクレージーホース・シリーズなど、新たな展開を見せた石垣でしたが、しかし、順調であった画家を病魔が襲います。2008年4月、瀬戸内地方を旅行中に石垣は脳梗塞を発症、入院とリハビリという苦難の日々が続きましたが、2010年代前半には再起を果たします。
再起後初の大規模な個展となる本展覧会では、初期から壮年期までの代表作と病を克服して描かれた新作によって、石垣定哉の歩みを紹介します。