八王子市夢美術館では 特別展「イギリスからくり玩具展 ポール・スプーナーとイギリスオートマタの現在」を開催します。
オートマタとは西洋のからくり人形を指す言葉で、自動で動く機械仕掛けの人形として広く知られています。日本では、からくりがこれにあたり、茶運び人形など江戸時代の伝統工芸や、郷土玩具などで古くから親しまれてきました。一方、西洋のオートマタは18世紀中ごろから19世紀にかけて、フランスの貴族や富豪の間で大流行し、技術の粋を集めた工芸品として主に発展します。そして、今日では機械仕掛けの技術はそのままに、アートとしくみの巧みさが同居した新しいオートマタも登場し、注目を集めています。
特に、本展で紹介するイギリスの現代オートマタは、その動作のユニークさとアーティスティックな形をあわせ持つ作品です。ハンドルを回すとカムやクランクの効果によって人形たちに楽しい動きがもたらされ、その小さな世界でちょっとしたストーリーが展開します。また、これまでのオートマタは、その内部機構や仕掛けを一切見せないのが普通でしたが、彼らがつくる作品の多くは、あえて機構部をあらわにし、上部で動くフィギアとそれを動かす仕組みを一体化して見せる新しい発想がとても特徴的です。遊び心にもあふれた現代オートマタは子どもだけでなく大人も楽しめる作品といえます。
これらを手掛けたポール・スプーナーらイギリスの作家たちは、かつてロンドン・コベントガーデンにあった現代オートマタ常設館を本拠地にオートマタ・アーティスト集団として活躍したことで有名です。彼らの作品にはイギリス国内のみならず、日本をはじめ世界中に熱狂的なファンやコレクターがおり、加えて、現在も多くのオートマタ作家に影響を与えています。
本展ではそうした作品約60点を中心に紹介し、大部分は実際に動く様子も見てお楽しみいただけます。作品だけでなく図面やスケッチ類なども一部展示、また、数種類の機構模型で動きをもたらす仕組みや面白さを体験していただけるコーナーも会場内に設けます。イギリス独特のユーモアとウィットに富んだからくり玩具の世界をお楽しみください。