私たちの周りにはさまざまな線があふれています。光や水の動きに線を感じることもあれば、概念上の線をも私たちは見いだすことができます。
点と点が連なると、無限にのびる線になります。いくつもの線が合わさりあうことで面となり、異なる次元へと移行します。また琴の弦のごとく、ぴんと張られた線が振動すると大小の波動が生まれ、音色となります。見える線も見えない線もともに私たちの心を捉えるのです。
漆芸家・髙橋節郎の作品の特徴としてあげられる、黒漆や朱漆の中に浮かびあがる鎗金(そうきん)の形象。ときには金糸のように繊細に、ときには鋼の刃のようにするどく闇を切り裂き表出する線は、垂線や水平線、有機的な曲線と変化にとみ、鮮やかな作品世界を創りだしています。
本展では髙橋作品に併せて、豊田市美術館所蔵の国内外の作家による線をイメージさせる絵画や版画、彫刻作品などを展示します。私たちの心の奥ふかくにある琴線に触れて生じる、さまざまな線や弦の共鳴をお楽しみください。