彫刻は、現実の場と強くかかわる表現です。場に対する考察を通して彫刻は、それをとりまく社会や環境との関係のなかで成立していることが明らかとなり、また彫刻を場に形作る物質に対する探求は、フォルム(形)やヴォリューム(量塊)といった従来の彫刻に対する観点に加え、記憶や時間という事物の根源に差し迫る新たな視点を導き出しています。
川島清は1980年代初頭より作品を発表して以来、事物に対する思考を積み重ね、その継続と実践のなかで、この彫刻の核心にかかわる問題を鋭く照射し続け、今日までその高い精神性に支えられた作品を通して常に関心を集めてきました。
本展では、近年制作を進める《水量》シリーズと新作を加えた《路傍ノート》の展示を通して、彫刻の在り方にかかわる問題の本質を切り拓く思考の有り様を伺うとともに、時代をみつめ、物質を凝視する川島の眼と身体によってもたらされた作品世界をご覧いただきたいと思います。