アンジェは、フランス中西部ロワール川流域の中心に位置し、14世紀に織られた美しく壮大な《黙示録》のタピスリーで知られます。
アンジェ美術館は、アンジェの貴族ピエール=ルイ・エヴェイヤール・ド・リヴォワ侯爵(1736-90)が蒐集した絵画コレクションを核として、1801年に創設されました。その後フランス政府からの寄託作品や、コレクター、アンジェゆかりの作家らによる寄贈と遺贈を受けながら、豊かな美術コレクションを築き上げてきました。
本展は、アンジェ美術館のコレクションより、17世紀から19世紀にかけてのヨーロッパ美術の名品を、絵画と彫刻約80点によって紹介するものです。その中心となるのは、フラゴナール、グルーズ、シャルダンに代表される18世紀フランスの優美なロココ美術です。なかでも、貴族たちが戸外で集う光景を描いた、ワトーとその周辺の画家たちによる「雅宴画(フェット・ギャラント)は、典雅な音楽にもたとえられ、夢と現実が一つに響き合う美しく詩的な世界をつくりあげています。
さらにジロデ、ジェラール、アングルなど、18世紀末から19世紀にかけての巨匠たちや、アンジェに関わりの深い画家、彫刻家の作品、あるいはロレンツォ・リッピやティエポロ・カノーヴァの作品をおさめたイタリア芸術、17世紀北方絵画なども含まれる、多様な出品内容となっています。アンジェ美術館のコレクションを日本で初公開する本展は、200年の歴史を誇るコレクションの精華を通してヨーロッパ美術の大きな流れを展観できるまたとない機会となるでしょう。