20世紀アメリカの画家ベン・シャーンの初期から晩年までの作品約300点
帝政ロシア領のコヴノ(現リトアニアのカウナス)でユダヤ系家庭に生まれたベン・シャーン(1898-1969)は、幼くして海を渡り、移民としてアメリカの地を踏みました。石版画工房で修練を積みながら勉学に励み、二度にわたるヨーロッパ旅行を経て、シャーンは画家として本格的に活動を開始します。1930年代には、冤罪 (えんざい) 事件に取材した社会批判的性格の強い作品で注目を浴び、その後、写真、壁画、グラフィック・アート等、あらゆる分野を横断しながら旺盛な芸術活動を展開しました。
やがてシャーンは、人間が社会の一員である以上に、誇り高く自由な「個人」であるという実感を強め、制作においても「主観」や「私」をいっそう重視するようになります。諸芸術への深い造詣と、慈愛に満ちた正義の上に熟成した独自の芸術は、今を生きる私たちの魂をも強く揺さぶる、普遍的な魅力をたたえていると言えるでしょう。
本展では、シャーンの初期から晩年までの作品を揃える、埼玉県朝霞市の丸沼芸術の森コレクションから、水彩・素描、版画、写真等約300点を紹介します。情趣あふれる描線と明快な色彩が織りなすシャーン芸術の豊かな世界をお楽しみください。