2002年は、日本とインドの国交樹立50周年にあたります。これを記念して、古代インド彫刻の名品展を企画いたしました。古代インドの宗教美術は、仏教やジャイナ教のもののほかに、インドの土壌の中で育まれた民間信仰の神々を造形化したものなど実に多様です。わたしたちにも馴染みの深い仏教美術は、その初期においては仏像の姿を表現せず、聖樹や傘、足跡などによってその存在を示していました。しかし1世頃にパキスタンのガンダーラとならんでインドのマトゥラーで仏像が作られるようになり、インドの仏教美術は大きな転換期を迎えました。マトゥラーの初期仏像は、大きく見開いた目、張りのある顔の表情、がっちりとした体つきなど、民間信仰のヤクシャ像の影響を受けた造詣に大きな特徴があります。
本展では、仏像の作られ始めたクシャーン朝(1~3世紀)のマトゥラーの作品を中心に、それを前後する時期の代表的な作品を選りすぐり、インド彫刻のエネルギーに溢れた造形をご覧いただきます。