杉戸洋(1970年名古屋生まれ)は、具象と抽象、物語と絵画の間の繊細なやりとりを通して、独自の絵画スタイルを構築してきました。淡いパステル色で描かれる、家や車、木、星空などの子どもが好んで描きそうな柔らかなものに、水平線や三角形、矩形などの幾何学が重なり、多層的な構図が現れます。そして大小様々な絵画の色と形態が呼応し合い、平面をはみ出して、その場を軽やかな空気感で満たします。そこでは、雨粒のような小さな粒子が、色となり形となって空間に拡散するのを、身体全体で感じるようです。
絵本で出会うような詩情と建築的な幾何学が融合したその絵画は、観る人の想像力を微細なものから宇宙的な広がりへと、自由に往還させます。今回、スパイダース[建築家・青木淳 (1956年生まれ)、大石雅之 (1979年生まれ)]とのコラボレーションによる展示も登場します。豊田市美術館の空間で、杉戸の世界はどのように展開されるでしょうか。