大陸的で厳しく格段に大きなスケールを持ち、アジアモンスーン地域共通の潤いに満ちた日本的情趣も併せ持った山水・風景が多くの人々を魅了する墨彩画家 陳 允陸。
「大自然の真髄や深い美の感動、その永遠なるものを描きたい」と日々創作に向かい、墨彩による独自の風景画の世界を展開しています。
1959年中国江蘇省に生まれた陳は、南京師範大学美術学部において中国の伝統的画法を学び、卒業後は文人画の祖といわれる王維に私淑し、自己の画風の確立を目指します。
1980年代末、中国で開催された東山魁夷展で、その作品に触発され渡日を決意。以後、日本の豊かな自然と四季の変化に魅せられて創作を続け、濃淡自在に変化する墨色と、空間に漂いながらいつしか溶け込んでいく淡彩、それぞれの色彩感が相俟って無限の奥行きと濃密な空気感を画面に醸しだす氏独特の世界観を追求し表現しています。
このたび日中国交正常化45年(氏の画業40周年)を記念し、当植野記念美術館において三度目となる個展を開催します。前回2007年展から約10年を経て一層の厚みと潤いを増した氏の墨彩画を、新作を中心に約75点の作品を展示し、あらためてここに紹介します。