ミケランジェロの石
光から闇の境にある透明な闇
以前、ドライポイントで版画を制作した時期がありその内に"ミケランジェロの石"と題名をつけた小品がある。
自身が思い描いたものを大理石に映していく行為は、闇である大理石を彫り、光を見いだす行為だと感じている。
ミケランジェロは、晩年、光と闇の間に生と死を一体化させたピエタ像を宗教を超えた一人の人間としての生と死をテーマに延々と造り続けた。
私が彫刻の上で追い求める"ミケランジェロの石"とは、大理石を前に光と闇の境目に存在する、透明な空間に姿を見いだす行為である。
2016年 板東 優