ゆかた、風鈴、提灯、団扇 (うちわ)―江戸の風情が残る下町で育った鏑木清方は、季節の風物詩のなかでも、夏を好んで描きました。
涼しげに浴衣を着こなす下町の女性達や金沢八景の別荘で穏やかに過ごす家族など、清方は身近な人や市井の人々の生活する姿に作品の題材を求めました。彼らの飾らない佇まいを季節折々の情景とともに繊細な筆遣いで描き、風情溢れる日本画作品や口絵などにあらわしました。
本企画展では、金沢八景の別荘で着想を得て描かれた名作《朝涼 (あさすず)》とともに夏の風情豊かな作品や口絵を紹介いたします。また、スケッチや下絵、校合摺 (きょうごうずり) など、日本画と口絵の制作過程もあわせて紹介いたします。