「時」と「風景」。この二つのテーマは洋の東西を問わず古くから美術作品の中に表現されてきました。とらえどころがなく、目で見る事のできない「時」は個々の作品として可視化され、見る者を深い哲学的な問いに導きます。そして眼の前にある「風景」は、それを写実的に捉えたものだけではなく、抽象的な造形言語や、目に見えない心の景色としても表象されます。時と風景は、多くの人がいまここで共有していながら、同時にひとりひとりの中にだけ流れ存在し、個々の記憶や思い出とも深く結びついてゆくものではないでしょうか。
本展は、滋賀県立近代美術館所蔵コレクションの中から選りすぐった現代美術作品を中心に、二〇世紀以降、作家たちがどのようにこうしたテーマを捉えたのかを、豊かな作品の数々を通じてご覧いただきます。
一九八四年にオープンして以来、三〇年を越えて活動を続ける当館は、今改めてコレクションの意義を見つめ直してゆく時期を迎えています。そうした中、本展が、今一度当館の魅力を感じていただく場となること、そしてそこで出会う時と風景が、またひとつ誰か/何かとの未来をつないでいくことを願います。