コミュニケーションをアートにした男
折元立身(1946年川崎生れ、川崎市在住)は、パフォーマンス・アーティストとして、現代美術の前線で、40年以上に渡り、国際的な活動を繰り広げてきました。
折元の作品は、ひとを驚かせるユニークな発想に満ちています。90年代には、顔一面にフランスパンを付けた異形で世界各地を旅し、現地の人々と交流した「パン人間」の路上パフォーマンスで注目されます。90年代後半には、アルツハイマー症の母を介護しながら、愛する母が登場する作品「アート・ママ」のシリーズを始め、2001年の第49回ヴェネチア・ビエンナーレでも紹介され、世界的に知られるようになりました。一見、突飛で摩訶不思議な表現のなかに、ひとへの思いや優しさも感じられます。母との介護生活を自らのアートと一体化させた折元の作家活動は、テレビや新聞・雑誌でも取り上げられました。
折元の作品は、さまざまなひとびと(世界各地の道行く人々、介護する母、おばあさんたち、入院している人々…)との即興的なふれあいを通して生まれます。ふれあいの対象は、人間にとどまらず動物たち(うさぎ、豚、鶏、アルパカ、あひる、魚…)にまで及び、生きとし生けるものとのコミュニケーションをアートにするという独創的な世界を切り開きました。
本展では、著しい進境を見せた1990年代から21世紀に入り今日までとどまることなく繰り広げられてきた折元の創作の軌跡を、映像、写真、グラフィック、ドローイングといった多彩な表現で紹介します。