日本近代美術の先駆者・萬鉄五郎は、41歳という短い生涯のなかで多くの作品を描きました。《裸体美人》に代表されるフォービスム、《赤い目の自画像》の未来派風、《もたれて立つ人》のキュビスムなど、その表現様式は多岐にわたり、日本近代を代表する画家という高い評価を得ています。それら広く知られた油彩作品に加え、水彩画、版画も手掛け、また水墨画にも新たな境地を示しました。ただ、その多様で独創的な表現ゆえ、作品が難解であるという印象が強く、一般の美術ファンからは「難しい」「よくわからない」と敬遠されがちであったことも事実です。
そこで「私の好きな萬鉄五郎、この一点」というテーマで、美術関係者や著名人にエッセイをお寄せいただき、それを手掛かりに萬本人や、その作品へ親しみを持って鑑賞いただける展覧会を開催いたします。様々な視点から語られるエッセイとともに作品を鑑賞していただくことで、読み解く機会となればと考えています。多くの皆さまに、萬鉄五郎に触れ、その魅力を感じていただければと思います。
あなたと萬絵画との新たな出会いが生まれることを祈っています。