西本良太は、家具や日用品の製作のかたわら、実用性を離れて、物から形や機能だけを切り離そうと試みています。切ったり、削ったり、詰めたり、なぞったり、単純で基本的な作業を通して、木材や、プラスティック、コンクリートといった工業素材、あるいは既製品にアプローチします。そこで生まれるのは、身近な道具や食品の似姿、例えば食品容器の形をしたコンクリートブロック、木製のアイスキャンディー。見慣れているけれど、何かがちがうモノたちのたたずまいは、ユーモラスで、視点の転換や見立てといった遊び心に満ちています。自由で自在な発想と、あたたかな手しごとの融合は、ユニークな存在感を示しています。
今回の公開制作では、家具やインテリアに利用されることの多い、集成材や合板など木材の表面に注目します。日常生活で使い慣れた素材が、機能や効能から解き放たれて、新しい姿を現し始める、その静かな変容のプロセスを、ぜひご覧ください。