19世紀末のヨーロッパに登場した新時代の芸術様式「アール・ヌーヴォー」。陶芸、木工家具、そしてガラスという3つの分野でその様式を花開かせたのが、ナンシー出身の芸術家エミール・ガレ(1846-1904)でした。豊かな表現で描かれたモチーフと大胆な形態、そして複雑で情感あふれる色彩は人々を魅了し、ガレは工芸を偉大な芸術の域にまで高めた作家として評価されました。彼の芸術を支えたのは、自然への愛情と植物学への情熱でした。彼は自宅に世界各国から3000品種近い植物を集めた庭園をつくり、熱心な自然観察に基づいて芸術を生み出しました。また、図鑑のような味気ない描写を嫌ったガレは、詩的な表現によって見る者の心に訴えかけることを目指しました。自然の描写に象徴を付け加えることで彼の作品は一層深みを増し、深遠な世界観までも表現したのです。本展では世界有数の近代ガラスコレクションを誇る北澤美術館の作品を中心に、ガレのガラス作品の魅力に迫ります。また、同時にオルセー美術館所蔵のデザイン画もご覧いただき、ガレの自然へのまなざしと芸術への情熱を感じていただきたいと思います。