小野竹喬の生まれ故郷に創設された笠岡市立竹喬美術館は、今年で開館34年目を迎えます。はじめはわずか18点であった収蔵品も、多くの方々のお力添えのおかげで2,772点(2015年12月現在)となりました。これらの収蔵品は、そのすべてが竹喬作品というわけではなく、竹喬芸術を理解する上で不可欠な作品や、笠岡の文化を語る上で重要だと考えられる作品等を含んでいます。
小野竹喬の名品は、当市以外の各所にあり、笠岡市では約1,000点を所蔵します。このたびの展覧会では、これらの所蔵品とご寄託いただいている作品の中から、日々竹喬作品に触れている美術館職員がおすすめする120点を選び出し、前後期にわけて紹介します。館内すべてが竹喬作品となるこの会期中、作品の魅力を楽しんでいただくばかりでなく、収蔵に至る経緯や制作の秘密についてもご紹介したいと思います。
瀬戸内海に面した笠岡は、陽光に恵まれ、海はのどかで山はなだらかです。その明るさや穏やかさは、日本のどこを描いた場合でも、そのまま竹喬作品の特徴として画面に表われていると言われます。一人の日本画家を通して、その人の故郷にも関心を寄せていただけましたら幸いです。