イタリア北東部に位置するヴェネチアは、ヨーロッパと東方とを結ぶ拠点として栄え、それら地域の発達した技術や文化を取り入れ発展しました。ガラス工芸もその一つであり、15世紀には、限りなく無色透明な輝きを放つガラス「クリスタッロ」や、独自の線模様による装飾「レースグラス」が誕生し、繊細で優美な造形を持つガラス器は、ヨーロッパ諸国の王侯貴族たちを魅了しました。16世紀になると、門外不出とされてきたガラス製造法が次第に流出し始めます。「ファソン・ド・ヴニーズ」と呼ばれるヴェネチアン・グラスを模倣したガラス器が作られ、ヨーロッパ各国のガラス工芸に影響を与えました。日本にも、南蛮貿易をきっかけにヴェネチアン・グラスやその影響を受けたヨーロッパ各国のガラス器が舶載され、異国の貴重な工芸品として珍重されました。やがて、それらのガラス器を模倣しようと、日本でも本格的な製造が始まり、ヴェネチアン・グラスとの共通性が見られる造形や装飾が施されたガラス器が作られました。
本展では、ヴェネチアン・グラスに魅了され、16世紀以降にヨーロッパ各国で作られたヴェネチア様式のガラス器を展示します。また、初公開作品を含む日本へもたらされたヨーロッパ製のガラス器もあわせて展示し、ヴェネチアン・グラスが和ガラスの製造に与えた影響についても紹介します。