木版画家・畦地梅太郎は「山男」シリーズの版画で知られる版画家です。1927年頃より版画作品の制作に取り組み始め、当初は都会風景を主に描いていました。畦地が山という生涯のテーマと出会ったきっかけは、1937年の夏、仕事で訪れた軽井沢で煙を噴き出す浅間山を見たことでした。その後、畦地は「山」を作品の主題とし、戦後には「山男」シリーズへと展開しました。
畦地の表現は、山そのものだけではなく、山に身を置く人間の心象や精神性に向けられていました。命をいつくしむようなそのまなざしは、あたたかく力強い作品となって今でも多くの人々を魅了しています。版画愛好家のみならず山岳愛好家からも絶大な人気を誇る、畦地梅太郎作品を収蔵品より一同にご紹介します。戦前の貴重な作品を中心に、畦地のたどった「山男」までの道のりをお楽しみください。