児玉画廊では3月5日(土)より4月9日(土)まで、ignore your perspective 33「人見ヶ浦より―Watching Man from Hitomigaura Bay ―」を下記の通り開催する運びとなりました。前期(3月23日まで)・後期(3月24日より)の二期に渡って、大久保薫、大西香澄 (前期)、貴志真生也、久保ガエタン、土屋裕央、光岡幸一、村田啓 (後期) の7名の作家を取り上げます。 児玉画廊のステートメントとして毎回テーマを打ち出し、開催している展覧会 “ignore your perspective”のシリーズですが、今回は殊に「perspective = 視点 / 視線」に拘りを持ってアーティストをラインナップ致しました。テーマは「人を見る」ということ。「人見ヶ浦より」。「人見」とは、舞台で演者が観客の様子を窺い知る為に幕裏に作られた覗き穴のことです。本展を、見る、見られる、見せる、見える、様々な人の様々な視線が無尽に交錯する舞台 (= 浦) に仕立てての、少し情緒的なニュアンスのタイトルとは裏腹に、20代の次世代アーティストが各々に今志向する様々な作品制作上の眼、それは観察であり、考究、思考であり、内省であり、表象化であり、視覚/認識論であり、そこに焦点を当てて露呈させるという目論見でもあります。人見は瞳、浦は裏。意味も見え方も幾重にも変転し、反転するように、視線と視点を交錯させようというアーティストと児玉画廊による企てです。
村田啓 (後期出品) 最新映像作品「Big jam / Bad fish」を上映致します。矢継ぎ早に多様なアレゴリーを孕んだシーンが連鎖的に展開していきます。シーン一つ一つは脈絡ないように思えるものの、少しづつ、何かが何かに引っかかり、記憶が尾を引くように繋がっている。作家の言葉を借りると「イメージのささくれ」という表現は言い得ているように思えます。鵜飼を例にして村田が言うには、鵜が飲み込んだ魚は嘴から入り喉元を抜けて、本来ならばその後腹の中で消化されるべきところ、鵜飼によって締め上げられた喉に留め置かれます。その時魚は一体何を思うのか。鵜の喉元という一つの通過地点に過ぎない部分において、鵜飼によって「空間」に変容されたこの特殊な喉元においての魚の心理状態。この作品は、その魚の巡らす思いのようにとりとめもなく様々に変容し、見る者の受け止め方によってもまた様々に変化していきます。それは村田の作品がアレゴリーに富むというだけではなく、映像の編集/構成のテンポ、色彩とモノクロの交錯、音声と音楽、それらの狡猾な仕掛けによって、あるいは深読みさせ、あるいは意味を見落とすことを誘導しながら観衆との複雑な関係性を楽しんでいるように思えてなりません。
大西香澄(前期出品) 児玉画廊|京都において、個展「サンドイッチ」(2013年)を開催、映像、音、動く人形などが渾然となりつつも、大西香澄という一つのパーソナリティを浮き彫りにしていくような緊迫のインスタレーションを発表しました。今回は大西の最新インスタレーション作品「Have a nice day.」を展示します。導入のドキュメンタリー的なシーンから引き込まれるメインの映像画面とそれに縦走する2つの映像というトリプルチャンネルのビデオインスタレーションです。自己投射や自己相対化を繰り返しながら困難や痛みを抱えながら毎日生きていくということ、それは、辛くも幸せなことだと静かにそして確信を持って語りかけるような作品です。時間を取って始まりから終わりまで是非ご覧下さい。