美術は言葉をこえる、と言われます。
とはいえ、美術について考えるとき、知ろうとするとき、言葉はいつも不可欠となります。ひとは美術を語りたいと思い、語られた言葉は作品の周りに積み重なって、その見え方さえ変えていくものではないでしょうか。
本展では、ひとりの美術評論家の仕事から、主に1960~70年代の美術が日本で紹介され、評価されてきた過程の一側面を振り返ります。
中原佑介(1931-2011)は、戦後日本を代表する美術評論家のひとりです。理論物理学を学んだ京都大学理学部在学中に『美術批評』誌の評論募集で一席(1955)に選ばれ評論活動を開始しました。前衛を支持し、理論的な評論を多数手がけて長く第一線で活躍しています。
中原は国内外の多くの作家たちと交流し、美術評論家として画廊などのパンフレット、雑誌、画集、カタログ、書籍など、さまざまなメディアに文章を書きました。それらの評論文は同時代の美術活動に社会性を与え、作品評価をかたち作る要因になっていきます。
本展では中原の元に残されていた美術コレクションから約40点を選んで、当館所蔵の関連作品約50点とともに展覧し、当時の出版物等を交えてご紹介します。